【介護】職場で意見の対立を防ぐ方法

いきなりですが、現場で次のような場面に出くわしたとき、正解はどちらでしょうか?

例1. Aさん(利用者)に入浴の声掛けをしたら「今日は気乗りしないから明日入りたい」と言われた。

選択肢① 入浴日は決まっているので、ルールを守って今日入ってもらう。

選択肢② 了承して、明日のスタッフに任せることにする。

ルリ
ルリ

ちょっと情報少ないし、ケースバイケースだとは思うけど、私なら選択肢②を選ぶかな。

カイアル
カイアル

僕も心情的には選択肢②だね。
だけど選択肢①もわかるし、間違いじゃないよね。

実際には、利用者の体調や性格的な部分、認知症の有無、前回入浴からの期間、家族の希望、他の入浴者の数やスタッフの人数などから、総合的に判断することになると思います。

ですが、人によって判断基準は違いますよね?
それによって意見が異なり、方針が定まらず、トラブルに発展するケースもあります。

今回は、介護の現場で意見がわかれたとき、どうすべきかについてお伝えしていきます。

1. 介護に正解はない??

介護の仕事をしていて、研修などで「介護に正解はない」という言葉を聞いたことがありませんか?

「ひとつのやり方にこだわる必要はない」「こうあるべき、と決めつける必要はない」などの意味です。

誰ひとりとして同じ利用者はおらず、心身の状態や価値観もさまざまで十人十色。
その時々によって臨機応変な対応を求められるところから、そう言われるようになったのだと思います。

ケアのことを考える際には、考慮する材料がたくさんあります。

・利用者の生活歴、趣味嗜好、性格
・利用者の既往歴
・認知症の有無、進行状態
・本人の希望
・家族の希望
・利用者の体調や気分
・スタッフの負担の大きさ
・他利用者との兼ね合い

認知症で自己主張が上手くできない利用者であれば、さらに判断が難しくなります。
また、判断するスタッフもそれぞれ価値観は異なります。

介護の現場で意見がわかれるのも仕方ないかなと思えますよね。
意見がわかれることは悪いことではないし、当たり前のことです。

2. 利用者優位?スタッフ優位?

スタッフ間では、利用者優位かスタッフ優位かで意見が割れることがよくあります。
もう一度、例1を見てみましょう。

例1. Aさん(利用者)に入浴の声掛けをしたら「今日は気乗りしないから明日入りたい」と言われた。

選択肢① 入浴日は決まっているので、ルールを守って今日入ってもらう。

選択肢② 了承して、明日のスタッフに任せることにする。

カイアル
カイアル

選択肢①は、スタッフ側を優先している印象で、
選択肢②は、利用者側を優先している印象を受けるね。

ルリ
ルリ

だけど、どっちの選択肢も間違ってないように思えますね。
判断が難しい…

選択肢①であれば、もしAさんだけが入浴日を気分で選べるようになると、他利用者から苦情がくる可能性があります。
翌日の入浴者数が多かったり、人員が少なかったりしたら、スタッフの負担も大きくなります。
そのような理由から、その日に入浴してもらうのも合理性があります。
どちらかといえば、施設側、スタッフ側のことを考えた選択になります。

選択肢②であれば、Aさんの気持ちを尊重した判断であると言えます。
もしかしたらAさんは体調が優れないかもしれません。
元気だったとしても、その日に無理に入浴してもらおうとしたら、Aさんを不穏にさせてしまう可能性もあります。

どちらの選択肢にも正当性はありますね。

もちろん他の選択肢もあると思いますが、いずれにしても何かしらの判断を下さなくてはなりません。

どのような基準にもとづいて決めるべきでしょうか?

3. ケア方針を決めるときに最も大切なこと

ケア方針や業務内容を決めるうえで最も重要なことは、「バランス指針」をあらかじめ決めておくことです。

「バランス指針」とは ”「利用者側」と「スタッフ側」の力の比率” のことです。

これだけだと分かりにくいので、具体的に説明します。

通常、利用者へのケアの質を上げようとすれば、スタッフの負担が大きくなります。
例えば、施設で利用者の入浴日を、週2回 → 週3回に増やせば、その分の人員を増やす必要ができ、スタッフ側の負担が増します。
これは「利用者側」に力が寄った選択です。

反対に、入浴日を、週3回 → 週2回に減らせば、その分の人員が浮いて、スタッフの負担が軽減されます。
もちろん軽減された分だけ他の業務に力を入れられると思うので、一概にトータルのケアの質が落ちるとは言えませんが、入浴に限って言えばそれまでの週3回という質の維持ができなくなります。
これは「スタッフ側」に力が寄った選択です。

この「利用者側」と「スタッフ側」の力のバランスをどこに設定するかをあらかじめ決める、それが「バランス指針」となります。

力の配分例とそのイメージ
利用者側:スタッフ側=9:1 …… 利用者家族の意思を尊重し手厚いケアを行うが、スタッフの負担も大き
利用者側:スタッフ側=7:3 …… できるだけ利用者家族の意思を尊重するが、スタッフの負担もある程度考慮
利用者側:スタッフ側=3:7 …… 利用者家族の意思をある程度考慮するが、規則が厳しく融通も利きづらい

上記のように数字化しておくとイメージしやすいです。
ちなみにカイアルは、利用者:スタッフ=7:3、程度の比率で伝えています。
できるだけ利用者に重きをおきながらも、スタッフが疲れすぎず介護の仕事を楽しめるようにとの思いから、この比率にしています。

ルリ
ルリ

要は、利用者優位かスタッフ優位か、施設として決めとけってこと??

カイアル
カイアル

ざっくりで乱暴だけど、そうだね😓

実際には、さまざまな要因から判断して、ケア内容や業務内容を決めていくことになると思います。
その前段階の土台として、「バランス指針」をハッキリさせておくことは大切です。
実体験の話にはなりますが、驚くほど効果があります。

力の比率をあらかじめ決めて周知しておくと、それを前提とした意見が出てくるので、スタッフ間での対立も起こりにくいです。

利用者優位、スタッフ優位の意見でわかれてしまったときも、この視点に立ち戻ると答えがまとまりやすいでしょう。

配分については自由ですが、法人施設の方針として「バランス指針」を決めておきましょう。
これが定まっていないと、個々の価値観に全て委ねることになるので、意見の対立が起こりやすくチームもまとまりにくくなります。
逆にしっかり定まっていて、それが周知されていると、そのまま施設の ”色” になります。

4. 注意点

「バランス指針」をあらかじめ決めておき、意見がわかれた際にはそれをベースにケア内容を決定していきますが、注意点はあります。

絶対ダメなこと

どんな理由があろうと、以下の内容に該当するものはダメです。

・虐待などの犯罪に該当する行為
・倫理に反する行為(暴言など、大多数の人がダメだと思う行為)

まずは両方の意見のニーズを満たせないか考えてみる

「バランス指針」は意見が対立したときに有効ですが、双方のニーズがしっかり満たせるような解決案があれば、それに越したことはありません。

例えば、以下のように意見がわかれたとします。
・Aさん(スタッフ)「利用者が退屈そうだから、レクリエーションの時間を増やしたい」
・Bさん(スタッフ)「時間内に終わらないから、記録の記入を優先したい」

この場合、Aさんのニーズは「利用者が退屈に感じないようにしたい」、Bさんのニーズは「時間内に業務を終わらせたい」です。
広義の意味では、Aさんは利用者寄り、Bさんはスタッフ寄りの意見です。
「バランス指針」で考える前に、まずは両者のニーズを実現できる案がないか考えてみましょう。

双方のニーズを満たすには、「記録を簡略化・効率化して、浮いた時間でレクを提供する」「スタッフがガッツリ付かなくてもできる個別作業を考える」などの解決案があります。

実際に両者がWin-Winになるような案は実現が難しいことが多いですが、工夫次第でできることもあります。
「バランス指針」による考え方は、次点にとっておきましょう。

5. 意見の対立を激減させた考え方

僕がリーダーになったばかりの頃、自分なりにざっくりとしたケアの考え方はあったのですが、スタッフによって意見もやり方も違い、「利用者本人がこう言ったから…」「スタッフの負担が…」とそれぞれの主張もあり、判断に困ることがありました。
介護に正解はないというのだから、尚更です。

しかし、「バランス指針」の考え方を取り入れるようになってから、スタッフ間の意見の対立が少なくなったと実感しました。

「バランス指針」を決めておくと、スタッフ全員にひとつの大きな判断指標ができます。
施設の方針ということで、他のスタッフに説明しやすく理解も得やすいです。

既に述べましたが、僕の場合はだいたい、利用者:スタッフ=7:3、ぐらいの比率で考えていました。
個人的に感じることですが、「利用者のため」「スタッフの負担が大きい」などの言葉を大義名分として持ち出し、楽をしたいだけのスタッフや間違った介護をしてしまうスタッフへの抑止力としても機能したと思います。

ルリ
ルリ

いるわぁ!
もっともらしいこと言って、自分がサボりたいだけだろって奴っ!
腹立つ!やっちまいましょう!

カイアル
カイアル

やっちまうのはダメ

ぜひ、取り入れてみて下さい。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

コメント 参考にしたいので、皆さんの職場のことを教えていただけると幸いです

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